TOYOTAのCMの特異性

vietatofumare2007-02-21


 英国の民放TVで流されているCMの種類は日本と変わらない。目に付くのは、自動車、金融、スーパー。CMをうってもペイする商品は限られるからなのだろう。CMの作りは日本ほど凝ってない気がする。うーむ、とうなるようなものが少ない。というか一つしかない。英語うんぬんということではない。作りが平凡なのだ。CMそのものにおカネをかけられないからか、電通博報堂のような会社が存在できるほどのマーケットがないからなのか。

 これまでのところ、思わずクスッとわらったのはTOYOTAYARIS(日本ではビッツという名前)である。正直、主人公は画像の女性なのだが、この女性のこういう表情のうらにある心持ちに英国人は笑えるのだろうか。そもそも、「気にしない」というスタンスではなんでこんな顔をするのかさっぱり理解できないと思う。15秒の短い物語である。

 この女性と男性が広場でラジコンの飛行機で遊んでいる。男性が大喜びで操縦していて、途中で操作を女性に教え操縦させる。女の子は「イェー、イェー(わかった、なんとかできるよ)」と言いながらラジコンを操作する。男もうれしそうに飛行機を見ている。と、突然、女の子は操縦桿を一方向に押し付けわざと墜落させ、ラジコン飛行機を壊す。男はその操作を見ていない。驚きと悲しみの表情でラジコン飛行機の方向へ走り寄る。女の子はすまなそうな顔をしているが、男が走り去ってしまうといたずらが成功したときの子供のようにニコっとする。わざとやったのだ。そして、シーンは「Two Days Earlier(2日前)」にもどる。トヨタのビッツに2人が乗っている。ドライバは女性で、男はラジコン飛行機を買って家に帰る途中である。ビッツは女性のもののようである。家に着くと男は大喜びでラジコン飛行機を取り出し、家へ入ろうとする。この気持ちはわかる。そのとき、ビッツのドアを足で閉めた。蹴ってはいないのだが、褒めれた行動ではない。それを見て女性はムッとする。そこで画面は暗くなり、「Today, Tomorrow, Toyota」と表示させれる。なるほど、大事にしているビッツのドアを足で閉めた仕返しで飛行機を壊したというわけだ。

 へぇ、面白いなぁ。そう思ったのだが、こんなものは英国人にわかるのか。そういう気の回しかたに気を配るものなのか。外国人ははっきり言葉で抗議してくるんじゃないのか。このCMは英国人のエージェントが作ったのか。などという疑問がいろいろ湧いてきた。その後、なんどかこのCMを目にした。結構な量を放送している。意外な気分がした。その後、なんと違うバージョンのCMも現れた。

 ところが、やはりこのCMのニュアンスは英国人に理解されたなかったようである。何故なら、CMの一番最後の部分が若干修正されているものが放送されはじめたから。一番最後のシーンはTOYOTA YARISというロゴがでるだけだったが、現在は「TOYOTA YARIS, Treat with respect(敬意をもって扱ってね)」という風に変更され、女性がそれを読み上げているのだ。つまり、このCMの言いたいことを最後に「言葉」にして伝えてしまっている。暗にほのめかす、という方法は英国人には「伝わらなかった」ということだ。Treat with respectなんて、「言ったら野暮」というものである。そういうわけで、このCMの異質性は英国では際立っていたなぁと思うのだ。