ローマ期のエジプトのミイラ

vietatofumare2007-03-01


 添付の絵、かなりいい感じである。真ん中の女性、日本の女優さんという感じ。少し前まで一般的であった映画館の看板画ような雰囲気がある。陰影が十分でているし、瞳にはハイライト(光の反射で一番明るくなっている部分)がきっちりある。上手なもので、綺麗な人だなぁと思ってしまう。両脇のオッサンはさしずめ悪役というところか。「あねさん」が主役のやくざ映画の宣伝に使えそうである。

 ところがこれは、古代エジプト末期のミイラの棺に書かれた絵なのだ。古代ローマに占領されたエジプト王朝は基本的にギリシャ人・ローマ人が政治の中心にあったので、ミイラの習慣があって埋葬されるひとがいても棺にはこういう絵が顔の辺りに書かれているということです。時代はAD100-200というから「五賢帝」の時代。ちゃんとした人が皇帝の座についていた時代です。古代ローマのときに作られて今も残っているモザイクからも分かりますが、ちゃんとした絵が当然ですが描けていたわけです。

 そこで気になるのはなんで中世になると「くそ」みたいに下手くそな絵しか残っていないのでしょうか。それどころではなかった、ということなのでしょうけど。1200年代ころから1500年代まで徐々にルネッサンスがイタリアで起きますが、中世から脱した画家の最初が「ジョットー」だと聞きました。彼の時代から、人がちゃんと描かれるようになったと。ジョットーと同系列で少しあとの時代のマザッチオという人の絵をフィレンツェの「カルミネ」というところで見ましたが、ミケランジェロなどにはかなり見劣りしますが、彼が先べんをつけたといわれればそうなのかなという気がする絵でした。立体的だったし人には表情があったし。

 ところが、ローマ期の普通の絵を見ると「なんだ、ジョットーよりこっちのが数段上じゃねぇか」という気がします。陰影も表情も全部あります。3人ともどんなキャラなのか想像できます。私はいい絵だと思います。

 一体中世ってなんだったんでしょうね。『中世とは何か』というゴルフの本を秋ぐらいに買ったのですが、あれはまだ読んでいないですね。なんで1000年もろくでもない時代にヨーロッパはあったんでしょうか。ちょっとそのあたりに興味を持ちます。古代ローマがすごすぎたというのはよく分かるのですが、続く中世って一体何? 暮れあたりに放送されていた塩野七生さんの番組で、塩野さんは「これから中世にはいる」というようなことを言っていたと思います。来週あたりからは中世の展示品でも見よう。見たところで何がわかるわけでもないですが、何をやっていたのかの一端は現物をみれば知ることができますから。