大英博物館も慌ただしくなるときがある

vietatofumare2007-03-03


 というわけで、毎週土曜日は大英博物館で過ごすことにしているのでまた来た。今回は、エジプト文明の続きと南米(マヤとかアステカとか)をターゲットにしている。時間を気にせず一人でゆっくり見ることができるのもあと数回である。荒俣宏ではないが、今日も目玉の訓練が続く。事前知識がない状態で見ると正直何も見えない気がする。目立つところに目が行ってしまうだけで、なにも記憶に残らない。それでも長い時間かけるといいはずだがイギリス在住というわけでもないので余裕はない。とりあえず『A-Z COMPANION TO THE COLLECTIONS』という大英博物館のガイドブックを購入してあるので、気になったものはそれで勉強してから再び見るという方法をとっている。へぇと思ったところに赤線を引き、これは見たいという物のページに付箋を貼っておく。そして、その本を片手にロンドンへ向かうというわけである。なんとなくだが、単なる観光ではなく研究しに来ている雰囲気がして満足である。付箋がたくさんはってあるので、本を売っているコーナーにそれを持って入ってもまったっく気が引けなくて良いというメリットもある。

 10時に入館して2回のエジプトのコーナーもなんとか見ることができ(つかれちゃって)、昼ご飯をグランドコートという屋内のカフェで食べる。十分休んだあとで南米のコーナーをじっくり見る。マヤだのアステカだの。大分雰囲気が違う。私はハンコックの「神々の指紋」という古代史解釈の本が大好きなのでこのあたりの文明にも興味がある。しかし、体力消耗が早くなっており2時くらいにはもう立っていられなくなる。仕方ないのでインド文明のコーナなどで石彫りのブッダや菩薩などを眺めていた。

 初めはかすかに聞こえていた音が耳につく。繰り返し繰り返し。高い感じの音だがなんだろう。そう思っていた。さて、再びグランドコートのカフェで休むかと思って外に出ようと思ったのだが、なにやら出口に係員が立っている。外へ出れないようである。あの音は実は何らかの緊急用サイレンだったようで、グランドコート内では鳴り響いている。そこにはちょっと高いレストランもあるのだが、お客さんだけでなくウエイターや料理人などのスタッフの姿が見えない。なんだか、慌てて逃げた感がある。そういえば、イギリスは今テロの危険がかなり高い状態らしい。そういうことか?

 しかし、である。大英博物館を攻撃しても対した被害はでんだろう。そりゃ貴重なものを壊すという意味や観光客の目玉スポットの人気を破壊するという効果はあるだろう。しかし、テロって「大勢の人を逃げ場のない状態に追い込んで殺戮する」からこそ「恐怖」なのであって、ロンドンならば地下鉄しかその場所はないはずである。まぁ、問題がおきたら個々からウォータールー駅まで歩いて帰ってもたいして時間はかからないから、そうしようか。そう私は実に安楽に考えて、再び収蔵品の見学を続けた。グランドコートは立ち入り禁止だけど、スタッフの人は見学者を館内から追い出そうとはしていない。ひょっとしたら、だれかが火災報知器でもいたずらしたのかもしれない。

 2回のメソポタミヤの一画はお客さんがいなくなってしまったので、一人で見放題である。そもそも大英博物館で人ごみをかき分けないと見れない展示品は「ロゼッタ・ストーン」だけであるのでどの収蔵品もゆっくりに見れるのだが、展示室に一人というわけにはいかない。円筒印象、お土産としてコピー品をうったらオレ買うのになぁなどと思いながら5000年前の人間の作品をひっくり鑑賞する。

 30分くらいしたら、またザワザワし始めた。どうやらグランドコート内にお客さんが戻ったようである。騒ぎの原因は分からずじまいであるが、とりあえず問題なかったようである。一次人が追い出さされるというのは、地下鉄でも何度か体験したので慣れてしまった。もちろんテロの危険があるからなのだが、過剰に反応してしまうのは仕方がない。私が気が楽なのは、危険が高い分監視も強化されているという事実があるからだし、CCTVもがんばっているだろうという想像のせいである。イラクでたびたびおきる自爆テロも基本は「人が沢山でている市場」というのがセオリーであるので、そもそも人ごみになっていないところに攻撃してこんだろう。そう思っているからである。月曜日の出勤ラッシュのロンドンの地下鉄、金曜日の盛り場。おそらく私が避けるのはそういうところかな。