考える手本として

ピラミデ


 何度か読んだことがある本です。謎を追求する、というような堅苦しい本でも、結局これが事実です、という答えを求める本でもありません。ただ、オープンクエスチョンとして残されいている「ちょっと不思議と言われている」ものを題材に「皆さんも一緒に考えてみましょう。いえ、前提知識はそんなに必要ありません。おいしいおつまみとカクテルとでいっぱいやりながら、答えがあるともないとも言えないことを考えてみましょう。」そういうスタンスの本です。

新・世界の七不思議 (創元推理文庫)

ワクワクする時間


 これが、「世界不思議発見」のような「なーるほど・ザ・ワールド」番組を文章にしただけの読みのもならば紹介しやしません。でも、この本はちがうんです。アトランティス大陸ストーンヘンジ、ピラミッド、秦の始皇帝ノアの方舟、ナスカ地上絵、モアイ像について「今まで教科書やクイズ番組で聞いていた解説って本当?」という気にさせれてくれる結論を素手でゆっくりと考えていく様子が書かれています。都内のとあるバーで、気の強い博学な自分と気の良いバーテンダーとその道の権威である外人教授と一緒に、素手で積み木を積んでいくように、アトランティス大陸って本当のところは・・・、というようなことを話し合う。娯楽って、こういうワクワクな時間を過ごすことだと思います。


仮説を思いつくかどうか


 知識は、あるかないかです。おカネや美貌と同じ。無い袖は振れない、どうあがこうとも。でも、工夫や考察は知識がなくても結果に影響を与えます。科学的な方法とか工学的なマインドとか、たとえ素手であっても生きていく上で絶大てきな力を発揮する。この本の主役である宮田というライターのマインドは無意識のうちにそれをやっている。「事実といわれるものから考察するに、秦の始皇帝は・・・ではないか?」そういう仮説生成は「知識がいくらあってもだめ」ということを思い知らせてくれます。これ、学者にとっては憧れの生き方だと思いますよ、きっと。ろくに知識がない状態でも、いままで思いつかなかった仮説を導き出す。素手で戦う感じですね。かっこいい。これだけでは意味のある結果は残せないかもしれないけど、何かを想像する人がもつ共通のマインドがこの本は教えてくれるような気がします。もっと、学ぼう。そいういう気になりますね。